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「ロマンチックな人間国宝 藤原啓の世界」2016/09/26

備前焼
重要無形文化財の「備前焼」保持者、藤原啓は岡山県の片上湾に面した井田村(備前市穂浪)の入り江のほとりで生まれました。
少年の頃より俳句や小説の才能を発揮し、文学少年だった藤原啓は20歳で上京し、博文館編集部で『文学世界』の編集を担当しました。その傍らに早稲田大学で英・仏・独文学を聴講するといった、積極的でロマンチックな青年として青春を大いに謳歌していました。

自ら小説や詩集を出版し、絵を描き、ヴァイオリンを弾き、帝国劇場の舞台に立つなど多様な才能を発揮した藤原啓でしたが、東京での波乱な18年間はその情熱とバイタリティを少しずつ蝕んでいったのでした。


精神衰弱で備前に帰郷


ningenkokuhou06博文館の『婦人之国』の編集などにも携わったのち、博文館を辞めフリーの作家として独立しましたが、自己の文学に限界を感じ志半ばで極度の精神衰弱に陥ってしまいました。

文学や絵画、音楽など、すべての事を断念し、38歳で郷里の備前市に帰ることになった藤原啓は、小説家の正宗白鳥の弟である万葉学者の正宗敦夫の勧めで三村梅景に師事し備前陶芸の道を歩み始めました。

40歳という早いとは言えないスタートにもかかわらず、柔らかで弾力のある備前の土の感触に安らぎを覚え、作陶への生涯を決意しました。また、1948年に国認定の技術保存資格者の資格を受けたのを機に、金重陶陽北大路魯山人らからも指導を受け、技術向上に邁進しました。


磨き上げた独自の芸術性


toujiki91藤原啓は人の物真似を嫌い、あくまでも自分自身でつかんだ芸術性に基づいたシンプルでおおらかな作品の創作に意欲を燃やし続けました。

「陶芸家はやきものだけではなく、絵画も彫刻も音楽もわからなければ、真の芸術家にはなれない」との言葉を残し、生涯素人作家の延長として陶芸を楽しんだ藤原啓は、牧歌的で独特な新感覚の作風を確立し、日本陶芸界に強烈な影響を与えました。

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