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「熟練の技【吹分】を駆使 齋藤明」2017/12/04

154鋳金の重要無形文化財保持者、齋藤明は、伝統的な技と豊富な経験で二種類の金属を融合させ、それまでになかった新しい形を生み出した近代感覚に溢れる金工家です。最も影響を受けた人物は同じく重要無形文化財に認定された高村豊周で、蝋型を始めとする技法などの指導を受けてそれを高度に体得し、生涯鋳金一筋に歩みました。


18歳で父の工房を受け継ぐ


齋藤明が生まれたのは1935年、鋳物工房を155営む金工家の父斎藤鏡明の長男として東京・西巣鴨に生まれました。父鏡明は佐渡出身で、佐渡の本間琢斉宮田藍堂に鋳金を学び、1909年に東京に移り巣鴨に工房を設立。蝋型鋳造の技術に長け、他の金工家達からも一目置かれる存在でした。鏡明の工房には、佐渡の金工家達が寒さで仕事のできない冬の季節に東京に出てきて、展覧会に出品するための作品を制作する拠点となっていました。
齋藤明は15歳で父から鋳金の手ほどきを学びましたが、わずか3年後に父が亡くなり、18歳にして父の工房を受け継ぐことになりました。工房を受け継いだ齋藤明は父の工房に出入りしていた佐々木象堂二代宮田藍堂などの金工家達に指導を受け、多くの研鑽を積み、鋳造技術に磨きをかけました。


高村豊周との出会い


1571949年、齋藤明が29歳の時に後の人間国宝高村豊周に出会いました。高村の作品に感銘を受けた斎藤は、以来、高村に師事し、さらなる技法や造形表現の指導を受け、伝統的な蝋型を始めとする技法を高度に体得。高村が死去するまでの23年間、高村工房の主任を務め、金工家としての実績を着々と積み重ねていきました。
高村没後は独自の路線を模索し、毎年のように中国、シルクロード、中近東、ヨーロッパへと出かけ、壺の形の源流などを探る旅を重ねました。様々な国や時代の器を旅先で出会ううちに、斎藤が行きついた先は、世界各国に共通する原型となる形や、旧石器時代の素朴な土器の形でした。
以来、人々の生活の中から生まれた器の原点となる形をベースに、異なる種類の金属をタイミングをずらして鋳型の中に流し込むことによって色分けされる高度な技術「吹分」を駆使し、優れた作品を世に発表。高い評価を受け、金工家として不動の地位を獲得したました。晩年は錬磨に精神しながらも、鋳金伝承者養成研修会の講師を務めるなど、後進の指導にも意を注ぎ、鋳金界の発展に寄与しました。


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