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「茶陶への熱い想い 備前焼 山本陶秀」2017/04/03

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山本陶秀は人間国宝である金重陶陽藤原啓とともに「備前三人衆」と称される備前焼を代表する陶芸家です。若くして岡山県備前市の窯元に弟子入りし、天才的な轆轤技術で端正かつ繊細な作品を残しています。その作品の多くは花入や茶入などの茶陶であり、武野紹鴎や千利休などの茶人の先駆者らが愛でた「率直で無作為な古備前」を生涯をかけて研究し取り組みました。


ろくろの陶秀


1906年(明治39年)、山本陶秀は岡山県備57前市伊予に生まれました。15歳の時から当時伊部で最も大きな窯元であった黄薇堂に見習いとして入り、1923年に桃渓堂で8年間、茶入や花生、水指などの茶陶類の轆轤成形の技術を習得。1933年に独立し、雅号を「陶秀」としました。
しかし、独立から5年後には京都の陶芸家楠部彌弌のもとで陶芸の基本となる形態の追求と、轆轤の徹底した再修練を行いました。当時楠部は帝展などで活躍する一流の作家でしたが、陶秀は楠部が得意とする釉薬ものの技術よりも、楠部の制作態度を身につけ、その後の作陶生活の基礎としました。
1943年頃には轆轤の冴えを発揮した作品を次々と発表し、備前焼陶芸家の中でも轆轤に抜群の才能を持った作家として知られる存在にまでなりました。しかし時代は太平洋戦争末期、備前にもその暗雲が立ち込み、陶秀は軍からの要請で陶器製の手榴弾まで制作させられていました。当時、手榴弾製造に関わった多くの窯元は型を使っていましたが、陶秀は轆轤を回して一つ一つ作っていたといいます。


茶陶の陶秀


58備前焼は釉薬などで誤魔化しのきかない焼き物だからこそ、陶秀の卓越した轆轤技術と備前に対するひたむきな感性が優品を生み出す事が可能となりました。その中でも陶秀の真骨頂として最も高い評価を得たのは、茶人達が最も核を重んじ、また珍重してきた茶入でした。
茶入の制作にあたっては、「時に自分のすべてであった」と語るほど、陶秀自身が生涯をかけて探求してきた分野でした。1976年から5回にわたって東京・大阪で開催された「茶入展」では、陶秀の備前焼の美の魅力を最大限提示して、多くの鑑賞者からの絶賛を受けました。両手にすっぽりと収まる程の小さな焼き物に、それまで蓄積してきた轆轤技術のすべてを集積した陶秀は、名物茶入にも劣らない、風格を備えた現代の備前茶入を生涯制作し続けたのでした。

 

 

 

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