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「平和の祈りを込めて梵鐘の復元 香取正彦」2017/09/04

1178月6日8時15分。原爆死没者の霊を慰め世界の恒久平和を祈念するため、毎年この時刻に黙とう共に平和の鐘が鳴り響きます。この音色の美しい平和の鐘は、1967年に鋳金工芸作家である香取正彦によって制作されました。戦時中、金属供出の為に多くの寺が神聖な梵鐘さえも差し出さなければならなかった悲劇を目の当たりにした香取は、戦後は父であり鋳金家のトップでもあった香取秀真とともに失われた梵鐘の復元に尽力しました。


画家志望から鋳金家へ


1925年、香取正彦は鋳金家の香取秀真の118長男として東京に生まれました。初めは画家を志していましたが、父の元で鋳金技術を身に付けた後、東京美術学校鋳造科に進学しました。

画像にある「苺唐草文花瓶」は、東京美術学校を卒業した1925年、パリで開催された現代装飾産業美術国際博覧会(アール・デコ博)に出品し銅牌を受賞。若くして金工界に圧倒的な存在感を放ちました。又、同年寺田たつと結婚し、公私共に順風満帆な生活を送っていました。


親子2代で梵鐘復元


119結婚後も帝展で特選となり翌々年まで3回連続で特選となるなど、華々しい活躍が続き、父秀真を中心に「七日会」を発足。秀真らの古典研究を直に見る事ができ、その後の制作にも大きな影響を与えました。
しかし太平洋戦争が本格的になってくると状況は一転します。空襲で田端の家を焼失するだけでなく、戦局の悪化と物資の不足を補うため、官民所有の金属類回収を行われると、寺院の梵鐘までも回収されていくのを目の当たりにしました。戦後は父と共に、戦時中に失われた梵鐘を復活させるべく、積極的に梵鐘制作に取り組みました。秀真没後は正彦が単独でこれを継ぎ、最終的に150口以上の梵鐘を制作しました。
1977年に正彦は重要無形文化財梵鐘の保持者として認定され、制作された梵鐘は、今でも日本全国の寺院で美しい音色を響かせ、人々の心を癒し続けています。

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